君シカオラン:装備品安定製造等確保事業の特定取組(4類型)
装備品安定製造等確保事業は、防衛装備品の安定供給を目的として、企業が自社の設備・体制・技術基盤を強化する取組を計画・契約により実施する制度です。
この制度における「特定取組」は、認定計画に基づいて実際に行う個別の活動を指し、装備品の安定供給を支える具体的な改善・整備・開発を伴います。
防衛装備庁では、取組内容を性質に応じて次の4類型に分類しています。

出典:防衛装備庁HP https://www.mod.go.jp/atla/hourei/hourei_dpb/02_kyoka_boshuyoko_antei_r070507.pdf
特定取組(4類型)
🔹サプライチェーン強靱化
近年、防衛装備品の製造では、海外からの原材料や部品の調達に大きく依存しており、国際情勢の変化や物流の停滞によって、供給の遅延・停止といったリスクが顕在化しています。
こうした状況を踏まえ、「サプライチェーン強靱化」では、特定取組として次のような対策が進められています。
- 原材料や主要部品の調達先の多様化・国内化
- 有事や輸入途絶に備えた在庫・備蓄体制の整備
- 将来的な代替供給を見据えた国産素材・部品の研究開発
これらの取組を通じて、装備品の安定製造を確保するとともに、調達リードタイムの短縮や生産リスクの低減を図ることが期待されます。
すなわち、平時からの生産・調達基盤の強化こそが、防衛産業の持続性を支える礎となります。

🔹製造工程効率化
近年、防衛装備品の製造現場では、多品種少量生産化の進行に加え、設備投資の回収期間の長期化、さらに熟練社員の高齢化といった課題が重なり、安定した生産体制の維持が難しくなっています。
一方で、防衛装備品には高精度かつ安定した品質が求められるため、生産工程の見直しと効率化が急務となっています。
このような背景を踏まえ、「製造工程効率化」では、特定取組として次のような改善が進められています。
- 最新の工作機械や産業用ロボット等の導入による自動化・省人化
- 人口知能(AI)を活用した検査・生産工程の最適化
- 先端製造技術(3Dプリンタ等)の導入・活用
これらの取組により、装備品等の製造・供給の効率化が図られるとともに、防衛事業からの撤退抑止や国際競争力の強化といった中長期的な効果も期待されます。
すなわち、製造工程効率化の推進は、「現場の持続力」を高めるだけでなく、日本の防衛生産基盤を将来にわたって維持・発展させるための中核的な取組といえます。

🔹事業承継
防衛装備品の製造を担う多くの企業では、経営者や熟練技術者の高齢化が進み、技能やノウハウの継承、後継体制の整備が喫緊の課題となっています。
また、特定装備品の製造・修理に関わる技術資料やライセンスの承継が遅れると、装備品等の供給力の維持に支障をきたすおそれもあります。
「事業承継・人材育成」では、こうした課題に対応するため、特定取組として次のような施策が対象となります。
- 製造施設等の整備(後継者への円滑な引継ぎを可能にする体制づくり)
- 技術資料・ライセンスの取得・承継(製造・修理に必要な知的基盤の維持)
- 教育訓練(技術・ノウハウの習得)(熟練技能の継承、人材の早期戦力化)
これらの取組により、円滑かつ確実な事業承継を実現し、財政面の負担軽減によって承継先を確保するとともに、承継に必要な体制を速やかに整備することが可能となります。

🔹サイバーセキュリティ強化
近年、防衛装備品の製造や設計、修理を担う企業に対し、サイバー攻撃による機微情報の流出が現実的な脅威となっています。
こうした情報漏えいは、技術的優位性の喪失を招くのみならず、同盟国等との技術協力や共同開発の継続にも深刻な支障を及ぼすおそれがあります。
防衛産業の一翼を担う企業として、サイバー攻撃に強い体制を構築することは、今や経営上の最重要課題の一つです。
「サイバーセキュリティ強化」では、特定取組として次のような施策が支援対象となります。
- 脆弱性調査(自社ネットワーク・システムの脆弱性診断とリスク評価)
- 情報システム上の強化(多要素認証・常時監視体制の整備・アクセス制御)
- 物理的対策の強化(電子錠付き入退管理・監視カメラ・など)
- 社内人材育成(情報保全・インシデント対応訓練・教育体制の構築)
これらの取組により、サイバー攻撃による不正な通信や情報流出の防止、および発生後の検知・対応・復旧能力の確保が可能となります。
さらに、企業としての情報保全に関する信頼性を高め、機微情報を取り扱う防衛関連製造等への参加がしやすくなるなど、取引基盤の拡大にもつながります。

まとめ
4類型はいずれも装備品の安定供給を目的としていますが、その取組内容には、「供給網強靱化」「製造工程効率化」「事業承継・人材育成」といった生産・経営の基盤を整えるものと、「サイバーセキュリティ強化」による情報・安全保障の体制を強化するものがあります。
次回は、この2つの視点から、申請の進め方や書類作成のポイントを具体的に解説します。
制度の特定取組や申請についてご不明な点がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
