君シカオラン:特定取組契約の実施事項について
今回は、防衛装備庁の「特定取組契約」について、契約締結から給付完了までの流れと、履行時の注意点を実務的な観点から整理しました。
制度活用を検討する事業者の方はぜひご参考ください。
また特定取組契約の制度概要はコチラを、契約条項は、以下の資料もあわせてご確認ください。
装備品安定製造等確保計画に係る特定取組に関する業務請負契約条項
装備品安定製造等確保計画に係る特定取組として実施する調査研究又は研究開発に関する業務請負契約条項
契約締結から給付完了・代金請求まで

出典:防衛装備庁HP https://www.mod.go.jp/atla/hourei/hourei_dpb/01_gaiyo_dpb_shisaku_r051213.pdf
① 契約の締結
- 「特定取組契約」が正式に締結され、装備品安定製造等確保計画に基づく業務を開始
② 特定取組の実施
- 契約後、事業者は「特定取組実施予定表」を作成・提出
- 監督官による確認・指示が行われる場合は、速やかに対応
- 契約期間中は計画に基づいて取組を実施し、設備・体制を整備
③ 特定取組の完了
- 計画で定めた取組を完了したら、「特定取組完了報告書」を提出
- 監督官による確認を経て、「特定取組完了確認書」の交付を受ける
※調査研究又は研究開発に関する業務請負契約の場合は、この時点で給付完了となる
④ 特定取組成果の活用
- 取得設備等を用いて指定装備品等の製造を実施
- 成果物(設備・技術等)は、紐付け契約に基づく装備品製造へ活用
- 万一、設備が使用不能となった場合は、速やかに報告し協議
⑤ 指定装備品等の納入完了
- 紐付け契約に基づき製造した装備品を納入
- 紐付け契約に係る指定装備品等の納入が完了したことにより、この契約に基づく給付は終了
⑥ 給付終了の報告
- 事業者は、「終了届」に「特定取組完了確認書」「特定取組活用報告書」を添えて提出
- 防衛装備庁による「受領検査」が行われ、合格後に「受領書」が交付される
⑦ 代金の請求
- 事業者は「受領書」を受領後、防衛装備庁へ代金を請求、原則として請求書受理後30日以内に支払が行われる
- 設備導入等に際して必要な資金負担が大きい場合など、前払金の支払を申請することができる
通常は担保を要するが、上位メーカーへの納入実績など、履行の確実性が認められたときは、担保免除が認められることもある。いずれにせよ、計画認定時点から資金計画を明確化し、甲との事前協議を行うことが重要である
契約履行時の留意事項
● 取得設備等の維持管理
設備・装置・プログラム等を善良な管理者の注意をもって維持し、譲渡その他処分の際は防衛装備庁の許可を得ること
● 下請・委託契約の管理
主要業務の外部委託は事前に承認を得ること。代理人を選任する場合は届出が必要。なお事業者に当該部分の履行義務あり
● 監督検査の対応
特定取組契約における監督・検査は、会計法に基づき、防衛装備庁が契約の適正履行を確認するために行われる。実務は主に各地方防衛局が担当。監督官は、防衛装備庁が定める監督実施要領や、事業者が提出した特定取組実施予定表に基づき、必要に応じて現地確認等を行う。一方、事業者側は、計画書や報告書などの書類整備、監督官来訪時の現場対応体制、および地方防衛局との円滑な連絡経路の確保が求められる
※地方防衛局は、防衛省の地方支分部局として、契約・調達・監督、ならびに自衛隊施設や防衛関連施設の整備・維持管理を担当し、各地域の防衛装備庁契約、監督検査、周辺対策などを行う、中央省庁と地域事業者・自治体をつなぐ重要な実務機関
● 計画変更・納期変更・事情変動
認定計画の変更や事情変動(法改正・災害等)がある場合は、防衛装備庁と協議し、契約内容を変更する
● 契約解除・違約金対応
履行遅延や不履行があれば契約解除の対象となり、乙の責に帰す場合は契約金額の10%が違約金として徴収される
● 貸付品の管理
貸与された物品や資材は、善良な管理者の注意をもって保管し、契約終了時に返還する
● サプライチェーンリスクへの対応
事業者には、情報漏えいや不正アクセス、システム停止などのリスクが生じないよう、部品・ソフトウェア等の変更管理を適切に行うことが求められる
まとめ
特定取組契約は、補助金のように単に資金を得る仕組みではなく、国家的装備品供給の一端を担う正式な請負契約です。
契約履行にあたっては、地方防衛局等の監督官による細かな確認・報告・検査が行われ、書類の整合性・設備の適正運用・成果の確認といった対応が求められます。
またサプライチェーンにおけるリスク管理など、契約後も不断の管理・報告義務を負う点が、防衛装備庁契約の大きな特徴です。
当事務所では、計画段階から契約履行、報告・検査対応まで、現場に寄り添いながら一貫してサポートいたします。
制度の趣旨を踏まえつつ、貴社の技術と体制を次のステージへ、ともに確かな形にしていきましょう。
制度を正しく理解し、計画・契約・履行を一体として進めることが、持続的な防衛産業基盤の確立につながります。
お気軽にこちらまでご相談ください。

